“それって漁師さんのためになっとる?”業界改革のため問い続ける『UUUO(ウーオ)』の経営論

レッド

written by ダシマス編集部

日本各地の水産物の売買をインターネット上で行えるサービス『UUUO(ウーオ)』を展開する広島のITベンチャー、株式会社ウーオ。

その経営の元には、“衰退する水産業を再生したい”というCEOの板倉さんの想いがあります。

今回は、そんな板倉さんと『Fledge』を運営するインビジョンの吉田との対談が、広島港で実現。二人の会社経営に対する熱い想いを語っていただきました。

▼株式会社ウーオについてはこちらをご覧ください

日本の漁業にテクノロジーで革命を起こす『UUUO(ウーオ)』の実態に迫る!

板倉一智(いたくら かずとも)

板倉一智(いたくら かずとも)

代表取締役CEO。鳥取県出身。幼いころから漁業従事者に囲まれて育つ。大学卒業後は株式会社日本通運に入社。その後日本の水産業界を再生したいという想いから株式会社ポータブル(現ウーオ)を創業。3児の父親、好きな魚介は松葉ガニ。

吉田 誠吾(よしだ せいご)

吉田 誠吾(よしだ せいご)

インビジョン株式会社のCEO兼カンパニーカルチャークリエイター。「一般社団法人 移住・交流推進機構JOIN」の特別法人会員。人材ビジネス歴18年目・経営歴11年目・2児の父親。好きな魚介は新サンマ、アジ。

起業にピンチはつきもの。知られざる経営者の苦労

ーお二人は、起業するにあたって一番のピンチって何でしたか?

板倉:会社を立ち上げてすぐ、競りの買参権が取得できなかったときですね。その免許がないと競りに参加して魚を買うことも売ることもできない、つまり売上も立たないんです。

吉田:それってどうやったら取得できるんですか?

板倉:仲買組合の許可が必要です。その許可をもらうには、圧迫面接みたいなものをクリアする必要があって(笑)。港に足を運んで仲買組合の人との関係性を作るのが一番重要ですね。もちろん、教えてくださいっていう姿勢も大事です。

吉田:業界ならではの苦労ですね。でもそれでいうとうちも同じようなことありましたね。リクルートの広告代理事業をやるには契約が必要で、会社を立ち上げてからその手続きに4ヶ月もかかってしまって売上を立てることができなかったんですよね。懐かしいです。

板倉:最近のトラブルは、逆に流通量が増えすぎて現場のオペレーションが上手く回っていないことです。嬉しい悲鳴ではありますね。

あとは、東京にいるような人材は当たり前ではないので採用のことも課題ですね。ありがたいことに応募はたくさんくるのですが、「今の会社がいやだ」とか「なんとなくおもしろそう」とネガティブだったり短絡的な志望動機の人も多いんです。

吉田:採用におけるアッパー層に出会うために何か工夫はされていますか?

板倉:社内の状況を逐一、見える化していくというのは積極的にやっていますね。誰がどんな業務をしているのかをオープンにすることが大事かなと思います。

吉田:どこら辺にいるこういう人が欲しいっていうのはあるんですか?

板倉:仕事にやりがいを持ちたいと思っていて、自身の成長を望んでいる人ですね。

吉田:それでいうと、会社のビジョンに共感してもらえる人が一番ですよね。

板倉:そうですね。魚を高く買ってもらうっていうのが一番重要なことで、そのためにどうしたら良いかいっしょに考えていける人ですね。

今はインターンも募集していて、その中のひとりの山本さんは、アルバイトで一次産業に触れた経験から業界にも興味を持っていて、伸びしろもあるというのが決め手でした。

▲「お金のためだけではなく、意志を大事に働いている人ばかりだったので、そこに共感しています」インターンの山本さん。

良い組織をつくるには、どれだけ世界観を語れるか

ーお二人が会社のビジョンを共有するためにやっていることは?

板倉:もちろんワンオンワンもしますが、日常の会話にも「それって漁師さんのためになっとる?」と言葉にしていくことを大事にしています。うちのビジョンは、漁師さんの利益を増やして業界をより良くしていくことなので、今いるメンバーもその想いに共感してくれていますね。

吉田:組織の40パーセントくらいが新しい人間になってきたときに、ビジョンや世界観をどうやって全員に浸透させるのかが課題になってくると思ってます。

だからうちでは、3ヶ月毎に「想いをかたちに会」っていうのをやっていて、活躍した社員の表彰をしたり、動画や写真とともにエンドロールを流すんです。会社がどこに向かっていて何をやっているかを全員で共有する場を設けるのが大事ですね。

板倉:組織が大きくなると共有するのが難しくなっていきますね。各チームのマネージャーというのが大きな存在になるんでしょうね。

吉田:「マネージャー=世界観を語れる人」でないといけないですね。世界観を伝えることをやってきている社会人って本当にいないんですよね。そうなると、長期的なお客さんができなくて、最終的には目標を達成できなくなっていく。

なので「会社」よりも「コミュニティ」と捉えて、色んなコミュニティがある集合体になっていけたらなって思ってます。組織が大きいと素速い動きもできなくなりますからね。その中で最低限のルールとビジョンに共感しながら成長できると良いですね。

板倉:まさに僕らもそうですね。最低限のルールとビジョンをつくり、それを基準値としてアクションを起こしています。

絶対に曲げない「漁師ファースト」のスタンス

ー世界観の共有は、社内だけでなくてお客さんに対しても大事なことなんですね。

吉田:でも、取引先に対してっていうのが一番難しいんじゃないかなと思います。商談に行って「あ、じゃあそれうちじゃなくてもいいっすね」って帰って来れるやつが社内にいることは大事。スタンスを曲げないでケンカして帰って来ちゃうくらいのね(笑)。

板倉:僕らもまさにそうで、自分たちのミッションに合ったクライアントやパートナーなのか、しっかりとジャッジしていますね。「漁師ファースト」という考え方に寄り添ってくれるか、というのがひとつのベンチマークになっています。

吉田:そうすると、“敵”も多そうな気がします。

板倉:なるべく安く魚を買いたいという業者さんももちろんいます。「でもそれは御社にとってのメリットはあるかもしれないですが、漁師さんにとってのメリットにはならないですよね」ってはっきり言いますね。僕らの目的は“漁師ファースト”を元に業界を良くしていくことです。そのために高く買って高く売る、そのスタンスは絶対に曲げません。

吉田:漁師さんは命をかけて漁船に乗ってるんですもんね。

板倉:海に落ちる危険性があるのに、そんなリスクを背負っても儲からないなんて、漁師がいなくなっちゃいますよ。水産業を良くしていきたいなら、魚を安く仕入れたいって言うのは矛盾してるんです。

吉田:板倉さんは今後も漁業に携わり続けるんですか?

板倉:東京で働いていた頃、地元の鳥取に帰省するたびに船の数が減っていたりとか、セリは以前の港全体ではなく半分くらいの区画で行われているのを目の当たりにして、どうにかしたいという想いがありました。そういった想いが強くあるので、まだまだこれからですが今後の人生も漁業に関することしかやらないです。

目標は「広島で一番入りたい企業」になること

ーこれから会社としてはどのように成長していきたいですか?

板倉:広島で一番入りたいと思ってもらえる企業になりたいですね。大企業を差し置いて、僕らみたいなスタートアップ企業がそういった実績を作ることで、地方企業全体の底上げができると思っているので、そこを目指しています。

吉田:それはいつくらいまでにとかあるんですか?

板倉:今は4年目なのですが、10年以内にと思っています。そのためには、新しく買参権を取得するなど、他の産地とのネットワークも作っていきたいですね。既存のプレイヤーから出荷、販売をしてもらうなど、組織としても大きくなっていく予定です。

ーお二人はそれぞれ、会社をどんな組織にしていきたいなどありますか?

吉田:基本的には、スタッフが一番大事だと思っていて、お互いを尊重し合えるコミュニティを作っていきたいですね。ピンチのときに助け合えるのが本当の仲間だと思っているので。でもほんとに色んな人がいるから紆余曲折があって、コミュニティ作りは一番課題満載です。

板倉:お互いを尊重し誰かの責任にしないことですね。あとは、この業務は何のためにやるのか、という本質を考えられることが大事です。うちでいうと、漁師ファーストというのがすべての基準値で、漁師さんの利益を上げるというミッションを忘れずにアクションを起こしていくこと、それが一番力を注ぐべきことだと思いますね。

取材を終えて

お二人の話を伺っていると、会社のビジョンの共有がいかに大切なのかを感じさせられます。しかもそれは社内のメンバーだけでなく、クライアントやパートナー企業など外に対しても共有していくべきことなのだと知ることとなりました。
広島で一番漁師さん想いな企業、『UUUO(ウーオ)』の今後の成長が楽しみです!

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